建築の世界では、意匠・構造・設備という大きく3つの分類があります。建物躯体(骨組み)の構造計算は構造専門家の仕事ですが、非構造部材の構造計算は意匠の専門家がやる必要もあります。そもそも中小規模の建物であれば、意匠・構造・設備を全部自分で設計することもあるわけですから、構造専攻でなくても構造計算をある程度は理解する必要があります。
本書では、構造専門家が扱わないちょっとした建築2次部材の構造計算をどのようにやればよいかが解説されています。
目次
2次部材の構造計算手順
2次部材の構造計算をする手順は、①どんな荷重が、②どの方向に作用し、③どれだけ変形するか、または、④どれだけ力を伝えるか、というステップで検討することとなります。
例えば手すりに人が体重をかける場合を考えると、まず、人から手すりに水平方向に荷重が作用し、それにより手すりが変形します。変形した手すりは手すり脚部のコンクリートに力を伝達します。このような順で考えていき、手すりの変形量(または発生する応力)が許容値に収まるか、あるいは、コンクリートに作用する応力が許容値に収まるかを検討することになります。
構造力学の基礎が重要
2次部材の構造計算は、建築士試験で出てくる程度の基礎的な構造力学の知識で十分対応できます。具体的には、
- 断面2次モーメント、断面係数
- 梁公式(片持ち梁、単純梁のたわみ量の公式)
などの知識が必要となります。逆に、これら以外の難しい知識は使用せず、シンプルに検討するのが良いと思われます。
荷重の設定は難しい
構造計算にあたり難しいのが、荷重の設定だと思います。構造計算の場合、荷重(積載荷重、固定荷重、地震荷重、風荷重、積雪荷重など)は法令に基づき設定するので割と簡単に決まります。一方、2次部材の場合は法令に荷重が明記されていないものも多くあります。その場合、学会基準などに推奨される荷重に関する記載がないかを探しに行きますが、これが結構難しい。また、探しても何ら基準が見当たらないこともあり、設計者が判断しないといけないこともあります。なのでこの部分が一番むずかしいのかもしれません。