機械式継手の特徴や注意点と、過去の建築士試験での出題事例について解説します。
目次
機械式継手とは?
機械式継手とは、圧接・溶接や重ね継手を使わずに鉄筋を継ぎ手する方法です。接合の際には、カプラーと呼ばれる筒状の器具を使って2つの鉄筋を突き合わせ、カプラーと鉄筋の間にグラウト剤を注入して固定することで、2つの鉄筋を接合します。
機械式継手のも様々な種類があります。主な以下のとおりです。
- ねじ式継手
- 圧着継手
- 充填継手
- 端部ネジ継手
- 併用継手
機械式継手の特徴
鉄筋の継手には、重ね継手・圧接継手・機械式継手の3種類があります。D29以上の鉄筋については重ね継手の使用が禁止されています。建物規模が大きくなると、柱や梁の主筋にD35やD38、D41といった太径の鉄筋を使用することも多く、重ね継手では施工できなくなります。
また、圧接継手については、太径になるほど難易度が高くなります。特に、D38を超える鉄筋の圧接を行うには、最も難易度の高い圧接4種の資格が必要となります。機械式継手であれば、このような資格が必要ないので、施工の難易度が下がります。
以上のことから、特に大規模な建築物の場合、機械式継手が使用されることが多くなります。
機械式継手の注意点
かぶり厚さの確保
機械式継手を使用する場合、継手の部分はカプラーの分だけ鉄筋経が太くなるため、その部分のかぶり厚さが小さくなります。かぶり厚さは、最も外側にある鉄筋からコンクリート表面までに距離であり、カプラーの部分であっても当然、所定の値を確保しておく必要があります。カプラー部分はかぶり厚さが不足しがちなので、配筋検査の際には注意しておく必要があります。
鉄筋のあき
隣り合う鉄筋同士のあき間隔は、鉄筋経に応じて所定を値を確保する必要があります。機械式継手を使用している場合も当然、所定のあきは確保する必要があり、カプラーの部分であきが不足しないように注意が必要です。
過去の出題例
建築士試験では、施工分野での出題が多く、機械式継手の使用によるかぶり厚さ不足、鉄筋のあき不足といった注意点を覚えておけば、問題なく回答できるレベルとなっています。
鉄筋コンクリート造の柱及び梁の主筋の継手に機械式継手を用いる場合、鉄筋径より継手部の 外径のほうが大きくなるため、継手部に配置するせん断補強筋の外面から必要かぶり厚さを確保しなければならない。 (2018年構造No23(4)、○)
機械式継手を用いる大梁の主筋の配筋において、隣り合う鉄筋の継手位置をずらして配筋する に当たり、カップラーの中心間で 400 mm以上、かつ、カップラー端部の間のあきが 40 mm以上となるように組み立てた。(2018年施工No8(3)、○)
⇒継手位置については、重ね継手と同様の考え方で、中心間距離を400mm以上ずらせばOKです。
機械式継手を用いる大梁主筋の配筋において、隣り合う鉄筋の継手位置をずらして 配置するに当たり、カップラーの中心間で 400mm以上、かつ、カップラー端部の間のあきが 40mm以上となるように組み立てた。 (2014年施工No8(1)、○)
⇒鉄筋のあきは、カプラー同士のあきが40mm以上となる必要があります。
まとめ
- 機械式継手は、重ね継手や溶接・圧接を使わずに鉄筋を継ぐ方法。
- カプラーを使用するので、かぶり厚さ、鉄筋のあきを確保することが重要。
- 継手の位置などは重ね継手の考え方を同じ。