1級建築士試験では、鉄筋コンクリート造の配筋の問題がよく宿題されます。その中でも定番なのが、定着長さと重ね継手長さの問題。最終的には暗記せざるを得ないが、施工分野でも出題もあり得るので、覚えておいて損はないはず。簡単に解説します。
目次
定着長さとは
各RC部材の内部にある鉄筋は、必ずその部材に接続する他の部材にまで入り込むように伸ばして配筋されます。これを定着と呼びますが、どの程度の定着長さを伸ばせばよいかは、コンクリート強度や鉄筋の種類、または部材種別によって変わってきます。
たとえば一番簡単な直線定着の例で行くと、以下のようになります。
この他にも、例えば先端にフックがつく場合もあり、この時は定着長さが少しだけ短くなります。
重ね継手とは
施工の都合上、1本の鉄筋の長さには限度があるため、現場で鉄筋を繋げることが行われます。その方法は、鉄筋を熱して繋ぎ合わせるガス圧接と、2つの鉄筋を少しだけ重複させて番線で縛り付ける重ね継手(下図)の2種類があります。
重ね継手長さも、コンクリートの強度や鉄筋の種類によって必要な長さが変わってきます。
定性的な傾向を理解しよう
定着長さや重ね継手長さは、通常は設計図書の特記事項のところに記載されていまし、一般的な配筋の方法については、建築学会などの指針を参照することが多いようです。
建築士試験の対策としては、まずは定性的な傾向をしっかり理解するということでしょう。
まず定着長さの特徴ですが、
- 同じ鉄筋ならば、コンクリート強度が大きいほど、定着長さは短くなる
- 同じコンクリート強度ならば、鉄筋の強度が大きいほど、定着長さは長くなる
- 同じコンクリート強度・鉄筋強度の場合、フック付きの鉄筋のほうが定着ながさは短くなる。また、フックの角度が大きい(180度に近い)ほど、フックの余長は短くて済む
基本的な考え方は、鉄筋が降伏するより先に部材が引抜けるのに避けるようにすること。鉄筋とコンクリートの間の付着力を十分大きくして、先に鉄筋が降伏してくれるようにすると、脆性的な破壊を防ぐことができます。コンクリート強度が大きくなれば単位長さあたりの付着力が大きくなり、その分定着長さを短くできます。逆に、鉄筋強度をあげると、鉄筋の降伏の前に部材が引抜けてしまうので、それを防ぐために定着長さを長くしないといけません。
次に重ね継手ですが、これもおなじようなイメージで、
- 同じ鉄筋ならば、コンクリート強度が大きいほど重ね継手長さは短くなる
- 同じコンクリート強度ならば、鉄筋強度が大きいほど、重ね継手長さは長くなる。
- フック付きの場合、重ね継手は短くなる。
これも定着長さを同じで、付着力を十分確保することで、鉄筋が降伏するようにしようという発想です。
あとは頑張って覚える
実際の定着長さや重ね継手長さは、コンクリート強度と鉄筋の強度に応じて、鉄筋径dの〇〇倍というように規定されます。よく出てくるのが40d(径の40倍)というものですが、この細かい数字は正直覚えづらい。上の定性的な傾向だけを理解し、具体的な数字が出てくる問題は、他の受験生も答えられないと思って割り切っても良いと思います。