擁壁の法令規制と建築士試験での出題ポイント

構造

先日、大阪の西成区で擁壁が崩壊して住家に被害が発生しました。擁壁の設計については、1級建築士試験でもたまに出題されるので、この機会にポイントを解説します。
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目次

擁壁の法令上の規制

擁壁の法規定は、都市計画法、宅地造成等規制法、建築基準法の3つがあります。基本的には、この順番に規制がされると考えると良いと思います。

都市計画法

都市計画法第29条によれば、一定規模以上の「開発行為」を行う場合に許可が必要となります。擁壁の設置も開発行為に該当するため、許可が必要となります。

(都市計画法第29条)都市計画区域又は準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市又は同法第二百五十二条の二十二第一項の中核市(以下「指定都市等」という。)の区域内にあつては、当該指定都市等の長。以下この節において同じ。)の許可を受けなければならない。(以下略)

宅地造成等規制法

宅地造成等規制法の規定では、宅地造成工事規制区域内で以下の4つのいずれかに該当する宅地造成を行う場合に、許可が必要となります。

  1. 切土であつて、当該切土をした土地の部分に高さが二メートルを超える崖を生ずることとなるもの
  2. 盛土であつて、当該盛土をした土地の部分に高さが一メートルを超える崖を生ずることとなるもの
  3. 土と盛土とを同時にする場合における盛土であつて、当該盛土をした土地の部分に高さが一メートル以下の崖を生じ、かつ、当該切土及び盛土をした土地の部分に高さが二メートルを超える崖を生ずることとなるもの
  4. 前三号のいずれにも該当しない切土又は盛土であつて、当該切土又は盛土をする土地の面積が五百平方メートルを超えるもの

図にすると以下のようなイメージです。

建築基準法

2mを超える擁壁を設置する場合、建築確認申請が必要となります。ただし、都市計画法による開発許可を受けたもの、宅地造成等規制法の許可を受けたものは、工作物の確認申請は不要(基準法88条第4項)

建築士試験での過去問

擁壁に関する建築士試験の過去問としては、構造分野で土圧に関するものが時々出題されます。例えば、以下のような点が出題されます。

  • 砂質土と粘性土による底面滑動力の違い
  • 主働土圧、受働土圧の定義
  • 擁壁の転倒モーメントと安全率
  • 擁壁の設計荷重

特に、主働土圧と受働土圧についても問題はよく出題されるので、しっかり理解しておく必要があります。

主働土圧:「土」が壁を押す方向に作用する土圧
受働土圧:「土」が壁から押される方向に作用する土圧

というように、「土」を主体と考えて、押す側の方向が「主動土圧」、押される側の方向が「受働土圧」とおぼえましょう。

擁壁の設計基準・チェックポイント

擁壁の設計基準は、宅地造成等規制法施行令などに具体的な規定があります。主な規定としては、以下のようなものがあります。

  • 土圧、水圧、自重によって、擁壁が転倒・滑動・沈下しないこと
  • 土圧等により各部に生じる応力度が、擁壁材料の許容応力度を超えないこと
  • 土圧等により生じる転倒モーメントが、安定モーメントの2/3以下であること(安全率1.5)
  • 壁面積3㎡いないに水抜き穴を設けること。
  • 地表水や土砂の流出を流すことができる排水施設を設けること

また、既存の宅地擁壁の安全性をチェックするポイントについては、国交省からの以下の資料が役に立ちます。

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