【書評】弱者の戦略

書評

生物の世界は「弱肉強食」であり、強者でなければ生きていけない厳しい世界であるが、そんな中でも弱者は確実に子孫を残して生き残っている。本書は生物学の観点から弱者がどのような戦略で弱肉強食の世界を生き抜いているかを解説した本である。

本書は生物界を例に弱者の戦略を紹介する本であるが、面白いことにビジネスや恋愛といった人間界における競争でも適用できると思われる戦略が多く出てくる。その中で気になったものをいくつか紹介していく。

目次

群れる、逃げる、隠れる、ずらす

「食うか食われるか」という生物の世界の中で、食われる者が食われないようにするための戦略が群れる、逃げる、隠れる、ずらすの4つである。

これらは、主に違う種から食われるのを逃れるための戦略であるので、人間の生活に直接的に応用できるようなものではないと思われる。

ただし、「ずらす」という戦略は、人間界の競争(同じ種の中での競争)でも役に立ちそうだ。条件が良いところは競争も激しく、強者でないと生き残れない。しかし、少し条件をずらすことで競争を避け、弱者でも生き残ることができるようになる。弱者の戦略の肝はこの「ずらす」ということである。

ナンバー1になれる場所を見つけることこそが弱者の戦略

生物の世界では、常にナンバー1しか生き残れない。餌の取り合いやメスの奪い合いなど、必ずナンバー1にならなければならない。そこで、弱者は戦う場所をずらすことで、うまく棲み分けることにより生き残ることができる。

ビジネスでいうニッチ戦略も、自分がナンバー1になれる場所でビジネスをするということである。強者と真っ向勝負などしても勝てないので、何とか勝てるフィールドを探すというのがビジネスを行う上で大事なことである。また同じく恋愛においても、自分が優位に立てる環境や相手を選ぶことで、恋愛弱者でもメスを確保することができるのである。

r戦略とK戦略

生物が子孫をより多く残していくときに、「弱くても数多くの卵を産む」という戦略と、「強くて大きい卵を少しだけ産む」といつ戦略が考えられる。前者をr戦略、後者をK戦略という。どちらが適しているかは、その生物が置かれている環境や競合との力関係などで決まってくる。ニッチな場所で生き残ろうとする弱者にとっては、より環境の変化に適用しやすいようにr戦略をとることが望ましいとされている。人間に当てはめるならば、弱者はとにかく「数打つ」ことが大事で、失敗を恐れずとにかく打席に立つ回数を増やすのが大事だということのようだ。

近年、貧富の格差拡大や生涯未婚率の上昇など、人間界でも金や性の奪い合いという競争が激しくなってきている。また、その競争の結果がより動物的、つまり、強者のみが金や性を手に入れる傾向が強くなってきているように感じる。競争の結果に文句を言っていても仕方ないので、弱者の戦略を身につけて、ニッチなフィールドで勝てる戦略を取りたいところである。

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