構造計算は、建物の規模に応じて様々な方法があります。どのような方法で構造計算を行うかを「構造計算ルート」といいます。構造種別によって違いがあるのですが、まずはその概要を整理します。
目次
3つのルートによる構造計算
構造計算のルートは主に3つあります。最も簡易なものをルート1で、ルート2、ルート3になるにつれて構造計算がより高度になります。
さらに、通常のルート1〜3に他に、限界耐力計算や時刻歴応答解析といった特殊な設計方法もあります。
この辺りの関係を整理したものが、国土交通省の以下の資料にありました。
ルート1:許容応力度計算
ルート1の許容応力計算は、中規模の建築物に適用される計算方法です。これは、建物に作用する荷重に対して、部材に発生する応力を算定し、それが所定の値(許容応力度)を超えないことを確認するというものです。
部材の許容応力度は、部材の強度に一定の安全率を考慮して設定されます。
ルート2:許容応力度等計算
ルート2の許容応力度等計算は、ルート1の許容応力度計算に加えて、さらに以下のようないくつかの項目を確認する計算をいいます。
- 建物の変形(層間変形角)が所定の値を超えないこと
- 建物のバランス(剛性率、偏心率)が所定の値を超えないこと
- 屋根ふき材について、風圧に対して安全であることを確認すること
ルート1の許容応力度計算では、部材に発生する応力だけに着目していましたが、ルート2の許容応力度等計算では、さらに建物の変形は建物のバランスにも着目した検討となります。
ルート3:保有水平耐力計算
ルート3では、ルート2までの検討(許容応力度、層間変形角、剛性率・偏心率、屋根ふき材)に加えて、保有水平耐力の検討を行います。
保有水平耐力は、建物の変形性能や減衰性能なども加味して計算した、建物として耐えうる水平力のことで、これが所定の値(必要保有水平耐力)を上回ることを確認することになります。
建物の変形性能や減衰性能を加味した計算を行う必要があるため、ルート1やルート2に比べてより高度な構造計算と言えます。
実は構造計算しなくても良い建物もある
実は、小規模な建築物の場合、構造計算が不要となる場合もあります。これは建築基準法第20条4号によるものです。ただし、構造計算により安全性を確認しなくても良いということであって、仕様規定は満足する必要があります。
まとめ
- 構造計算はルート1〜3まである。
- ルート1が最も簡易なもので、ルート2、ルート3になるにつれて、高度な計算手法となる。
- 小規模建築物の場合、構造計算が不要な場合もある。ただし、仕様規定は満足する必要あり。