建築関連法令における防火避難関連の規定は、内容が結構複雑で、建築士試験でも点を取りにくい分野かと思います。ただし、実務で必要になる場面は多く、建築士試験の際にしっかり勉強しておくと将来役に立つことが多いと思います。
今回は、その中でも耐火建築物について解説します。
目次
耐火建築物とは?
耐火建築物とは、建築基準法第2条9号の2で規定されるもので、以下の要件を満たす必要があります。
- 主要構造部が耐火構造であること、または、通常の火災が終了するまでの間、建築 物の倒壊及び延焼を防止するために必要な構造とすること。
- 外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他防火設備を設けること
上記のうち、1.は耐火性能を求めるということであり、一定時間の火熱を加えられた場合でも非損傷性・遮熱性・遮炎性を確保するというものです。また、2.は遮炎性能を求めることであり、屋内の火炎を屋外へ出さず、逆に屋外の火炎を屋内に入れない、というものです。
これらは、①火災終了まで建物が倒壊しない、②火災の延焼させない(広げない、もらわない)という趣旨に基づくものです。
準耐火建築物との共通点・違い
次に、準耐火建築物との違いです。準耐火建築物は、法第2条9号の3で規定されるものです。耐火建築物よりも少し条件が緩和され、次の条件を満たす必要があります。
- 主要構造ぶつを準耐火構造とすること、または、通常の火災による延焼を抑制する他に必要な構造とすること
- 外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他防火設備を設けること
上記のうち、2.は耐火建築物と共通です。よって違いは1.の主要構造部の扱いです。この主要構造部の違いはかなり分かりにくく、また別記事で解説したいと思います。
耐火建築物にしなければいけない条件
耐火建築物にする必要があるかどうかは、以下の2つの条文で規定されています。
特殊建築物の場合の規制
法第27条の規定で、一定条件を満たす特殊建築物※は耐火建築物にする必要があります。耐火建築物にする条件は、建物の用途・床面積・設置階などに応じて規定されています。
趣旨としては、不特定多数の人が利用する一定規模以上の建物は耐火建築物にする必要があるというものです。
特定防災街区整備地区の場合の規制
法第67条の規定で、特定防災街区整備地区内にある建築物で一定条件を満たすものは、耐火建築物または準耐火建築物にする必要があります。
特定防災街区整備地区とは、密集市街地やその周辺市街地に対して、特定防災機能(火災や地震の際に、延焼を防止したり、住民の避難確保を図るための機能のこと)等の確保を目的として、区市町村が定める地区のことです。
ただし、この法67条関連の耐火建築物について建築士試験で出題されることは稀です。
なお、以前は法61条の規定で、防火地域内で一定規模以上の建築物は耐火建築物にする必要がありましたが、法改正で最近は耐火建築物でなくても建築できるようになったようです。
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