建築士試験で構造計算ルートの問題はよく出題されます。実務上は、法令を確認しながらどのルートにするかを確認するのですが、試験対策として覚えておくべきポイントを解説します。
目次
鉄骨造における構造計算ルート
鉄骨造の構造計算ルートは、大きく3種類あります。
ルート1
ルート1は、許容応力度計算と屋根ふき材等の構造計算のみを行うもので、建築基準法施行令第36条〜80条の3の仕様規定に適合するように設計するものです。
ざっくりいうと、建物に粘り気には期待せずに、強度を確保して地震に耐えるように設計する方法です。
ルート1は、さらにルート1−1とルート1−2に分かれており、
ルート1−1は高さ13M以下かつ軒高9m以下、スパン6以下、延床面積500m2以内を対象とします。
ルート1−2は高さ13m以下かつ軒高9m以下、スパン12m以下、延床面積500m2いないと対象とします。
ルート1のポイントとしては、地震荷重を決める際の標準せん断力係数Coを0.2から0.3に割増しする点です。これは、ルート2、ルート3に比べて簡易な計算であり、建物の粘り気に期待しない代わりに、地震荷重を50%大きく設定して余裕を持った設計をするというものです。
ルート2
ルート2はいわゆる許容応力度等計算と呼ばれるもので、高さ31m以下、アスペクト比4以下の建物に適用されます。
許容応力度計算に加えて、層間変形角の確認、剛性率・偏心率の確認、屋根ふき材の構造計算が必要となります。
ルート2のポイントとしては、層間変形角が1/200以下、剛性率が0.6以上、偏心率が0.15以下であることを確認するという点です。
ルート3
ルート3は、保有水平耐力計算まで行うというものです。これは、建物の強度だけではなく、粘り気も考慮に入れて計算を行うということになります。
ルート3は高さ31mを超える建物にも使用できるので、ある程度規模の大きい建築物ではルート3で設計していることが多いかと思います。
過去問
過去問では、特にルート1に関する出題が多いようです。
柱材に板厚 6 mm以上の建築構造用冷間ロール成形角形鋼管(BCR)を用い、通しダイア フラム形式とした建築物の耐震計算に関して、「ルート 1 – 1 」において、標準せん断力係数Coを 0.2 として地震力の算定を行った。 (2019構造 No18(1) 、×)
⇒ルート1-1なので、標準せん断力係数Coは0.3とする。
「ルート 1 – 1 」で計算する場合、標準せん断力係数COを 0.3 以上として許容応力度計算をすることから、水平力を負担する筋かいの端部及び接合部を保有耐力接合とする必要はない。(2018構造No18(1)、×)
⇒ルート1-1なので、接合部は保有体力接合とする必要がある。
ルート2の計算において、冷間成形角形鋼管を柱に用いたので、建築物の最上階 の柱頭部及び1階の柱脚部を除く全ての接合部について、柱の曲げ耐力の和を梁の 曲げ耐力の和の 1.5倍以上となるように設計を行った。 (2016構造No18(4)、○)