(1級建築士)梁公式の導出② 単位仮想荷重法を用いた梁公式の導出

こんばんは

梁公式の計算の確認方法ですが、仮想仕事の原理を使う方法も便利で簡単でオススメです。仮想仕事の原理というものは、構造系以外の人はあまり馴染みがないと思いますが、一度覚えておけば色んな場面で使えます。詳細な理論な省略し、便利な使い方を説明します。

※1.~3.は難しいので構造系以外の人は飛ばしください。

目次

1.仮想仕事

ある物体に力\bf Pが作用した際、その変位を\delta\bf uとすると、仕事\delta Wは、

 \delta W=\bf P\delta/bf u

となります。ここまでは高校までの物理と同じ。
さて、ある物体に対して\bf Pが作用している状態で、”実際の変位とは関係なく”、任意の微小変位\delta\bf uが生じたときに、力Pがした仕事は、

 \delta W=\bf P\delta\bf u

となります。これは、力Pは実在のものですが、変位uは実在しない仮想のものですので、ここで定義した仕事は仮想仕事と呼ばれます。

2.仮想変位の原理

さて、この仮想仕事を使うと、以下のような重要な性質があります。

仮想変位の原理
物体が釣合い状態にある
⇔任意の仮想変位に対して、その物体に作用するすべての力のなす仮想仕事の総和が0である。

ここでいうすべての力には外力と内力があり、それぞれのなす仮想仕事を全て足し算すると0になるということです。この性質を利用して、仮想の変位を与えて、仮想仕事の総和が0になるような内力を求める、ということができます。(単位仮想変位法と呼びます)

3. 仮想力の原理

今までは「実在の外力・内力」が「仮想の変位」に対してなす仮想仕事を扱ってきました。次に、これの力と変位を逆にして、「仮想の外力・内力」が「実在の変位」に対してなす仕事を考えます。
この場合も、上の場合と同じような原理が成り立ちます。
(仮想力の原理)
骨組みの変形状態が変位適合条件が満たされる。

任意の仮想の外力とそれに釣合う内力に対して、実在の変位(およびひずみ)に対してなされる仮想仕事の総和が0になる。

これを利用すると、仮想の外力とそれに伴う内力がなす仮想仕事が0となるよう実在の変位を求める、ということができます(単位仮想荷重法と呼ばれます)

4.とりあえずこの式を覚える

という事で理屈はなかなか理解しにくいですが、実用上は簡単です。まず、上で示した単位仮想荷重法の一般的な形は以下のようになります。

 v_i=\int \frac{M(x)\overline{M}(x)}{EI(x)}  dx

この式の左辺は求めたい変位v_i、右辺は曲げモーメントに関する仮想仕事の項となります。
求めたい梁の曲げモーメントM(x)を求め、次に、変位を求めたい位置に単位の仮想荷重を作用させた場合の曲げモーメント\overline{M}(x)を求めます。

あとは、これを単位仮想荷重法の式に代入して積分していきます。

5.色々と応用ができます

梁公式の導出を例に練習してみます。

例えば以下のような単純梁の先端に集中荷重が作用するケースを考えます。左側が実際の荷重とその時のモーメント、右側が単位仮想荷重を作用させたときの仮想のモーメントとなります。これを上式に代入して積分をしていくと、以下のように梁公式が導かれます。

 v_i= \int \frac{M(x)\overline{M}(x)}{EI} dx \\
= \int_0^l \frac{Px\cdot{x}}{EI} dx \\
=\frac{Pl^3}{3EI}

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6.曲率の式から積分するより楽?

以前の記事で、曲率の式から積分を繰り返すことで梁公式を導出しましたが、これは2階の積分を計算しさらに境界条件から積分定数を決めるという手続きが必要となり、結構大変です。一方、仮想仕事の原理を使うと、梁公式程度であれば基本的には1回の積分計算で答えが出るので、やや楽なのだと思います。

また、もっと部材数が増えてきた場合、この仮想仕事の原理を用いた方が楽になります。特に構造系の人は将来的に使い道が増えるので、ぜひ覚えると良いでしょう。

ということで、単位仮想荷重法を用いた梁公式の導出についてでした。なかなか理解するのが難しいですが、一度覚えると便利なので、ぜひ覚えましょう。また、より詳しい解説はこちらの本あたりがおすすめです。

仮想仕事の原理と応用

仮想仕事の原理と応用

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